研究概要 |
「くりこみ群」は統計力学および場の理論の理解には欠かせない解析手法である.しかし,ランダムウォークやパーコレーションなどの確率幾何モデルの対するくりこみ群の適用例は,(a)その臨界現象を解析できるほど強力でないか,(b)確率幾何モデルを一旦,場の理論(スピン系)のモデルに書き直した上でくりこみ群の手法を適用したものがほとんどであった.また,スピン系のモデルに対しても,その高温側の解析はかなりなされているものの,低温相の解析はほとんど行われていない.本研究ではこれらの欠点の克服を目指した.今年度の結果は以下の通りである. 1.ランダムウォークに対するくりこみ群解析の困難を浮き彫りにし,その解決を図るため,類似の問題である「4次元スピン系の,磁場の存在下での臨界現象」「同モデルの低温相での臨界現象」の解析を行った.その結果,このモデルに対して,十分にくりこみ群解析が可能である事が判明した.これらはこれまでに世界の誰もが成功していなかった課題であり,その価値は非常に大きい.現在,「磁場の下での臨界現象」については研究がほぼ完成し,論文執筆中である.また,「低温相の臨界現象」についても大きな困難は解決済みで,時間の問題で研究を完成できると信じている. 2.上記の4次元スピン系の研究が非常に進展したので「4次元正方格子上の自己回避ランダムウォーク」のくりこみ群の解析を続行した.最終解決に向けて,非常に有望な取り組み方が見えて来ている.
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