研究概要 |
過冷却状態の液体に小さな個体を入れるとそれが引き金になって固化が始まり,針状の結晶が成長し,そこに側枝が分岐して,樹枝状の結晶が出現する.本研究は,このような現象を数学的に厳密に取り扱うための理論的枠組みを構築することを目的にしている. 樹枝状結晶は,(分子の異方性によって定まる方向に)一定速度で進んでいく針状結晶が不安定化して現われるものであるから,出発点として,針状結晶の成長モデルを取り上げる必要がある.これは,液層と固層との界面が放物面状になって一定速度で進行する二相ステファン問題の解を求めることになる.曲面を界面とするような進行波解は最近活発に研究されるようになったので,この方面で活躍している石渡哲哉氏(芝浦工業大学)と二宮広和氏(明治大学)に連携研究者として参加してもらうことにした. 石渡と高木はクリスタラインモデルを針状結晶の離散版に修正することを試みたが,最終形を得るには至っていない. 平成22年度末に複素解析学的手法を用いた自由境界問題に関する研究集会を開催し,二次元針状結晶解の存在について,専門家に解説してもらう計画であったが,東日本大震災のため,8ヶ月余り延期せざるを得なくなった.幸い,Saleh Tanveer教授(オハイオ州立大学)およびXuming Xie准教授(州立モルガン大学)による技術的詳細に関する丁寧な解説が実現し,基本的な考え方を理解することができた.なお,両氏の他にも様々なサーベイ講演がなされたので,その講演録を冊子体にまとめることにした.
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