本年度の研究では、昨年度までに開発したシミュレーションコードを使って、様々なテスト計算を行い6次元位相空間上の無衝突ボルツマン方程式を用いた無衝突自己重力系の数値シミュレーションの妥当性の評価を行った。テスト計算では主に、(1)空間1次元+運動量空間1次元の自由流、(2)空間1次元+運動量空間1次元の重力場中の運動、(3)空間3次元+運動量空間3次元での重力場中の重力不安定性と無衝突減衰、(4)空間3次元+運動量空間3次元での自己重力系での無衝突ボルツマン方程式の定常解であるKing球の安定性のチェック、(5)2つのKing球の合体シミュレーションとN体シミュレーションとの比較、(6)並進運動に対するガリレイ不変性の確認、のテストを実行した。(1)では移流方程式の数値解法の振る舞い(無振動性、正値性など)を確認し、(2)と(3)では密度揺らぎの線形摂動理論との比較を行い計算結果の妥当性を確認した。テスト(4)では時間積分スキームの精度と分解能の依存性を評価し、テスト(5)ではN体シミュレーションの結果との比較によって相互に一致する結果が得られることを確認した。 また今後の宇宙の大規模構造におけるニュートリノ減衰の研究に向けて、N体コードと無衝突ボルツマン方程式を組み合わせて、N体計算で計算できるコールド・ダークマター成分と無衝突ボルツマン方程式で解くべきニュートリノ成分の2成分での宇宙論的大規模構造形成を計算できるハイブリッドコードの開発を行った。
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