本研究計画は、大規模ニュートリノ検出器カムランドに不活性フッ化カルシウムシンチレーション検出器(以下、CaF_2検出器)を沈めた複合型システムにおいて、ニュートリノ欠損二重ベータ崩壊観測の可能性を検討するため、予測される検出器性能(エネルギーおよび位置分解能、バックグラウンド、安全・耐久性)の評価を行い、この斬新な検出器機構の有効性を検証するとともに、カムランド検出器の将来計画においてニュートリノ質量の絶対値測定に展望を開くことを目的としている。 CaF_2結晶とカムランド液体シンチレータ(配合:ドデカン80%、プソイドクメン20%、PPO1.36g/L)と同成分のLSを組み合わせた複合型検出器の試作機により、性能評価を行った。CaF_2検出器のシンチレーション発光波長は紫外光領域に分布し、カムランド型液体シンチレータにCaF_2検出器を直接沈めると、プソイドクメンの吸収および再発光によって波長変換が行われるが、プソイドクメンの再発光の量子効率は約40%程度であることが予備研究によってわかっており、CaF_2検出器信号の伝播を阻害する。これを克服するため二層式の構造を採用した。第一層はCaF_2検出器の発光を可視領域の光に変換し、第二層は液体シンチレータの発光を重視して、バックグラウンドの除去能率を向上させる。第一層にはプソイドクメンを使用せず、ミネラルオイルのみをベース溶媒とすることで、プソイドクメンによる波長変換の阻害を克服するアイデアを導入した。試作機により評価された複合型検出機構の基本性能をカムランド検出器実機での評価に適用するため、モンテカルロシミュレーションの開発が進められており、実験結果とシミュレーション計算結果の比較、および開発したシミュレーション法を利用したカムランド検出器実機での性能評価に必要な入力パラメータを、試作機によって収集した基礎データからの導出すること取り組んでいる。
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