研究概要 |
この研究では量子電磁力学が予言する量子場の零点振動力(カシミールカ)を素粒子標準理論の予想を越えた相互作用を実験的に検証する事を目的とする。特に空間の余剰次元を仮定したエギゾチックな素粒子理論の検証を行う。具体的にはねじれ秤の片側に金の球面境を取り付け、その向かいには金の平面鏡を設置する。ねじれ秤のねじれの角度は光てこによって測定し、常にねじれの角度が一定となるようにフィードバック制御を用いる。平成21年度ではねじれ方向のフィードバック制御を用いた測定データを元にした解析結果及び素粒子標準理論を超えるひとつのモデルへの物理的制限についてまとめ、その結果がPhysical Review Letters誌に掲載された(Phys.Rev.Lett.102, 171101 (2009))。さらにその内容を元により一般向けの内容を日本物理学会に投稿し、日本物理学会誌の「最近の研究から」に掲載された(2010年3月号195-199)。 平成22年度にはねじれ秤と極板間距離を精度良く測定するため、マイケルソン干渉計用の光源として周波数安定化レーザーを購入した。またねじれ秤の初期位置制御のための2軸ステージコントローラを購入した。またねじれ秤に近付ける極板の位置を周期的に動かす変調法を用いるため、振幅の精度良く安定している駆動系が必要となる。そのため線膨張係数が一般的な金属よりも2桁小さいスーパーインバーを用いた駆動ステージを用いており、その性能評価を行った。その結果、振幅安定性は長時間にわたって±2.5nm以下に収まっており、十分な精度が得られていることがわかった。今後、ねじれ秤の並進運動を測定するためにマイケルソン干渉計を組み込み、並進方向に関してもフィードバック制御をおこなう。この2重のフィードバック制御を行うことによって高感度化し、余剰次元をはじめとする標準理論を越えるエギゾチックなモデルの検証を行う。
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