本年度は二年目として、光電面の素材や電子を打ち込む対象となる発光素材について検討を行った。本研究で目指す光増幅のシステムでは、光電面で生成された光電子を加速し発光素材(シンチレータ)に打ち込み、加速エネルギーに相当するシンチレーション光を増幅された出力として例えばPPD(Pixelated Photon Detector or SiPM)などの光センサーで捉えるものである。そのため増幅されたシンチレーション光が入射光電面に戻り新たな光電子の発生は、増幅過程におけるポジティブフィードバックを引き起こし直ちに発振(暴走)するおそれがある。 これを抑制する方法として本研究で検討したのが、光電面量子効率(QE)感度を短波長側にシンチレータの発光スペクトルを長波長側に選ぶことである。 具体的には、光電面として最近開発が進んでいるGaNを、シンチレータとしてSrI_2(Eu)を考える。前者は400nm以上の波長で0.1%以下のQEであり、後者は鋭い発光スペクトルのピークを435nmにもつが400nm近傍には達していないためフィードバックは強く抑制される。100photo/keVと大きな発光量を持つため、2kV程度の打ち込み電圧、増幅光のPPDへの導入効率10%程度、PPDでのQEを40%と仮定しても、8光電子相当の信号が期待できる。これはPPDに対して大きな閾値の設定を可能とし、低ダークカウントレートのフォトンカウンティングデバイスとなりうることが明らかになった。しかもGaNの光電面は紫外領域に感度を持つことから、PPDではカバーできない波長領域が、この新発想光センサーで対応出来る見通しもえられた。
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