本研究では、酸化チタン光触媒が紫外光照射下で示す強い酸化分解力と超親水性に着目し、「チタン板を用いた環境にやさしい印刷法の開発」を行う。本年度は(1)印刷基板を目指したTiO2-PDMS複合薄膜の合成、(2)(1)で作製した薄膜のぬれパターンの作製について行った。 (1)については、感光性TiO2ゲルとポリジメチルシロキサン(PDMS)を複合した薄膜の作製について検討した。ゲルとPDMSを複合後、薄膜を硬化させるために紫外光照射を行った。次に、薄膜にTiO2に由来する光誘起超親水性をもたせるために、100℃の熱湯水の中で30分浸漬させた。その後、紫外線照射を行った結果、30分で超親水性になることがわかった。これは複合膜中のTiO2が結晶化していると考えられる。そこで、XRDによって複合薄膜を分析した結果、アナターゼに由来する結晶相が確認された。なお、複合薄膜はオクタデシルトリメトキシシラン蒸着後の紫外線照射により超親水化を示したことから、酸化分解力があることが示唆される。(2)については、フォトマスクを介した紫外線照射後、ペルチェ素子を用いて複合膜を冷却した結果、紫外線照射部は水滴が薄く広がり(超親水性)、それ以外の部分では水滴がそのまま付着していた(撥水性)。その後、複合膜に紫外線を全面照射し、オーブン中で一晩放置したのち、再び、異なるパターンをもつフォトマスクを介して紫外線照射した結果、そのパターン形状を反映した撥水-超親水パターンを形成することを確認した。
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