本研究では、酸化チタン光触媒が紫外光照射下で示す強い酸化分解力と超親水性に着目し、「チタン板を用いた環境にやさしい印刷法の開発」を行う。本年度は(1)オフセット印刷の大型化、印刷の実施、(2)TiO2-PDMS複合膜を用いた再生可能なぬれパターンの作製、(3)研究の総括、について行った。 (1)については、チタン板を1000℃で焼成することで表面凹凸構造を有する酸化チタン表面が簡易に得られることを発見した。これを元に、はっ水性自己組織化単分子膜との組み合わせにより、超親水-超撥水パターンを作製することに成功した。さらに上記の基板は繰り返し使用することが可能であり、全面に紫外光照射を行い酸化チタンの酸化分解力によってはっ水性自己組織化単分子膜を分解した後に表面を初期化し、再びはっ水性自己組織化単分子膜をコーティングした後にフォトマスクを用いて紫外光照射することで任意の超親水-超撥水パターンを作製することができた。(2)については、TiO2-PDMS複合膜をガラス基板上に作製し、湯浴を用いた低温焼成によって酸化チタンを結晶化した。その後、フォトマスクを介した紫外光照射を行うことで、超親水-撥水パターンを得ることができた。このぬれパターンは熱によって初期の状態に戻すことが可能であり、さらに紫外光と熱との組み合わせによってくり返し書き換えのできるぬれパターンであることが実証された。(3)については、研究の総括を行った。本研究では、光触媒の強い酸化力と超親水性を使用した新印刷法の開発に成功し、さらに新しい展開として酸化チタンとPDMSはっ水性材料を組み合わせることで、繰り返しぬれパターンを作ることのできる新しい材料系を見出した。
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