研究概要 |
スピンホール効果に伴うスピン蓄積を直接観測する手法として,エピタキシャル人工格子とX線共鳴磁気散乱を組み合わせた回折実験を提案し,人工周期構造を持たせることで信号強度を増大させ微小なスピン信号を検出することを目指した.当該年度は大きなスピンホール効果が期待されるエピタキシャル人工格子としてPtと絶縁材料の組み合わせで良好な膜成長が実現するような材料探索と,成長条件の最適化を図った.一般的に2層から成るヘテロエピタキシーを実現する場合,どちらの膜成長においても層状に成長させることは困難である.Ptの(001)および(111)について,MgOとA1203の2種類の絶縁体薄膜の成長を様々な成長温度で調べた結果,基板温度200℃でMgO(001)基板上に良質なPt/γ-A1203(001)がエピタキシャルに成長することが分かり,これを30周期積層した試料を用いて回折実験を行った.2アンペア程度の電流を印加し,Pt LII端付近で共鳴散乱実験を行ったが期待される信号は得られなかった.今後は,多層膜に微細加工を施してさらに電流密度を上げるような改善を行い同様の実験を実施したい.また単層のPt膜をもちいて全反射条件でXMCD測定を行うなどの手法も検討する.
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