研究概要 |
本研究では,プロトン互変異性物質において,非接触の方法で初めて電気伝導度特性を系統的に調べ,さらに,マイクロ波顕微鏡を用いて局所的複素伝導度を測定することにより,新しい相転移のメカニズムを明らかにし,さらに,これらの相転移を光で制御することによりプロトン移動を利用した新しいタイプの光スイッチの開発をすることを最終的な目的としている。 本年度は以下のことを行った。 (1)昨年再構築した粉末の空洞共振器測定システム(それ以前のスペックを達成)を用いて,相転移の大きなヒステリシスの再現性を確認した。 (2)昨年度は2-ヒドロキシフェナジン類(1)についてマイクロ波複素伝導度測定を行ったので,今年度は同一の基本骨格をもつより単純な分子である7-ヒドロキシキノリン類(2)について検討を行うため,2とそのメチル置換体を合成した。 (3)7-ヒドロキシキノリン類は,有機ガラスマトリックス中において,紫外光照射によりプロトン移動を起こし,その互変異性体を生成することを見いだした。これは,7-ヒドロキシキノリン類も固体中でプロトン移動にもとづく光スイッチ材料となる可能性が示唆された。 (4)昨年に引き続き,走査プローブ顕微鏡ユニットを作製した。室温でのスキャンが出来るようになったので,本年度他予算でSPMコントローラを新調し,周辺機器を整備し,さらに低温動作までもってゆきたい。
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