本年度は研究初年度でもあったので、(1)多孔質アルミナ膜をマスクとしたグラフェン上へのナノ細孔アレイの転写技術、及び(2)ナノ細孔グラフェン上へのFET形成技術、をまず確立した。 (1)では多孔質アルミナ膜に形成されるナノ細孔の直径や細孔間隔を自由に制御できる実験条件をアルミニウム基板の陽極酸化電圧・温度・溶媒などを変えて調査した。この結果、細孔直径を10-80nm程度に制御し、細孔間隔を10-30nmに制御できる条件を見出した。さらにこのアルミナ膜をマスクとしグラフェンのアルゴンガスエッチングを行い、ナノ細孔アレイをグラフェン上に転写することに成功した。一方課題として、アルミナ膜の細孔直径が小さいとグラフェン上にその細孔が転写されにくいこと、アルミナ膜マスクがグラフェン上に貼りついて剥がれ難い個所があること、がわかった。 このナノ細孔グラフェンの細孔エッジのSTM・TEMによりまず観察した。この結果、電子が局在するZIGZAG構造が存在する個所もあることがわかった。また、磁化を超伝導量子干渉計(SQUID)で測定したが超伝導転移は発見できなかった。さらに、ナノ細孔グラフェン上に4端子電極を形成し、電気抵抗の温度依存性なども測定したが、今のところやはり超伝導転移は見つかっていない。 そこで水素ガスやホウ素ガス雰囲気中での高温アニールを行い、キャリア注入を試みたが、実験設備の都合上まだうまく行っていない。上記課題と併せて、来年度改善を行い、超伝導を模索する予定である。
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