研究課題
本研究は炭素原子一個分の薄さを持つ二次元シート「グラフェン」における新奇物性現象(超伝導)を探索することを目的とした。グラフェンのエッジ(端)を活用する二つの新材料系を開発し、その結果以下の新奇物性現象を発見することに成功した。まずカーボンナノチューブ(CNT)を酸化・自然開口し超低欠陥グラフェンナノリボン(GNR:グラフェンの一次元短冊状物質)を創成、これに三段階熱処理を加えることで、従来の欠陥有りGNRに比べて七倍以上大きいエネルギーバンドギャップの実現に成功した。また、これがArmchair型エッジに起因する可能性を指摘した。グラフェンの半導体的応用ヘブレークスルーをもたらしたとして、この結果は次ページで記すNature Nanotechnologyに掲載されLatest Highlight、News&Views、表紙見出しにも選ばれた。次に、多孔質アルミナ膜マスクを用いて低欠陥で六角形のナノ細孔を蜂の巣アレイ状にグラフェンに形成し、これを高温水素熱処理した場合強磁性が発現することを発見した。強磁性は細孔構造に強い依存性を持つことも発見し、従来の炭素系物質のように欠陥に起因して強磁性が発現しているのではないことを明確に示した。さらにこの強磁性が細孔zigzag型エッジの局在電子スピンの存在に起因することを理論との比較から指摘した。この結果も現在Nature Nanotechnologyに受理されており、出版準備中である。当初意図した超伝導の発見には至らなかったが、今後このエッジスピンをさらに研究・制御することで、超伝導の実現も可能であると思われる。
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Nature Nanotechnology
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http://www.ee.aoyama.ac.jp/Labs/j-haru-www/