研究課題
量子計算の実現のために位相的な性質を有効活用しようとするのが位相的量子計算である。そのため結び目や多様体の量子不変量、特にチャーン・サイモンズ不変量が重要な役割を担い、物理量の具体的な計算では量子群やスピン・ネットワークの手法が用いられる。物理的には非可換な交換関係をもつ粒子系である量子ホール系での実現が期待されている。代表的な例としてはフィボナッチ・エニオンが挙げられ、SU(2)_3の対称性を持つ。従来の研究対象はこうした対称性を持つものが主であったが、例えばKuperbergや村上斉(分担者)らによって構成されたスピン・ネットワークのような異なる対称性を有する模型が知られている。量子計算を効率よく行うためのひとつの指標としてエンタングルメント・エントロピーがあげられるが、本年度はKuperbergらのネットワーク模型について解析を試みた。エンタングルメント・エントロピーは量子不変量と密接な関連があるため、具体的な結び目・多様体の不変量を解析し、その物理的、数学的な意味づけを与えることは重要である。分担者との共同研究においてトーラス結び目の色つきジョーンズ多項式の漸近的な振る舞いを厳密に解析し、古典的な位相不変量との関連性を明らかにした。エンタングルメント・エントロピーはブラックホールのエントロピーとの関係も指摘されている。この関係の理解のためには、多様体の持つエントロピーを理解することが必要となる。複素多様体の位相不変量と共形場理論の指標との関連性に基づき、多様体のエントロピーを導入・計算し、ブラックホールのエントロピーとの関連性を指摘した。
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Journal of High Energy Physics
巻: 2010:02 ページ: 019:01-28
Letters in Mathematical Physics
巻: 92 ページ: 269-297