1. 競馬市場の投票の確率モデルの解析を行った。投票者として、候補者にある比率(競馬では馬の勝率に対応する)で投票するもの(独立投票者)と、候補者の得票数に比例した確率で投票するもの(コピーキャット投票者)の2種類の場合、前者の比率の2倍の指数で投票率の分散が投票回数とともに減少することを示した。競馬市場の投票の時系列データの解析を行い、分散が投票回数のべき乗則に従うことを検証し、独立投票者の比率が約26%であることを示した。また、得票率の示す投票の精度をAR (Accuracy Ratio)で計測すると、投票回数のべき乗側に従うことが分かったが、これは得票率の分散の収束の指数と簡単な関係にあることを示した。これらの結果から、競馬市場では為替や株式市場のような、ファンダメンタルを重視した市場参加者+トレンド(チャオート)を重視した参加者のモデルではなく、独自の予想をもとに投票する参加者+トレンド重視の参加者でモデル化できることが明らかになった。競馬市場ではファンダメンタル重視の参加者は投票の後半のオッズがある程度固まった段階で参加する。 2. 週間天気予報の精度をARで計測し、予想する日時が未来になればなるほどARが下がる傾向を調べた。また、降水確率が小さい場合の降雨の頻度、降水確率が高い場合の非降雨の頻度を調べ、予測事象の生起のスケール不変性を検証した。ARの減少傾向から、大気の状態がランダムウォーク的な変化なのかカオス的な変化なのかは断定できていないが、スケール不変性は降水率が高い場合の非降雨に見られた。降水確率が小さい場合の降雨については、データの精度からは明確なことは分からなかった。
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