研究概要 |
これまでの考察を継続して,原始惑星系降着円盤ガスを記述する基礎方程式の定式化を検討し,軸対称場の基本的性質,すなわち,定常流が満足するべき平衡状態や軸対称定常流の安定性の基準を中心に考察を行い,具体的な設定としてダスト層起源の乱流を題材にして流体理帰宅的な構造の探索を進めた.原始惑星系降着円盤ガスにおいては,降着円盤中心面(z=0,zは円盤面に対し垂直方向の座標)においては,その対称性からz方向のエントロピー勾配がゼロとなる特異点が存在する.このことは,z=0において平均的な渦位がゼロであることを意味し,z=0を境界面と見立てての地球流体力学的な意味での傾圧不安定波が形成できないことを示していた.状況は回転球面上の赤道域と類似しており,z=0面を挟んで,z>0で渦位の値は正、z<0では負となる.しかし,降着円盤では特異点は二次のゼロとなるため回転球面上で有効であったβ面近似の手法を使うことができない(β=0であることと等価である),降着円盤ガスのシアー不安定の地球流体力学的構造の解明には抜本的な再考察(波の構造の研究)が必要であることがわかった.角運動量あるいは熱の供給を受けた際の軸対称場の大域的な構造を行う系の設計に関しては,これも,回転球面上の赤道付近の扱いと同様,z方向に放物柱関数を用いたスペクトル変換法によって定式化することができた.円盤方向の無限領域を扱うには石岡の方法(無限平面の球面投影を用いる方法)を用いることにより,これもスペクトル変換法で計算できる.スペクトル変換法と座標変換を組み合わせることにより得られる簡便な形式の数値計算モデルの構築は期間内に研究実施期間内には完了しなかった.
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