全惑星が海洋に覆われた場合について水平2次元の数値モデルを作成し、基本的力学を調べるための数値実験を行った。実験設定は、過去の研究による知見が乏しい同期回転惑星を想定した。要点は以下のとおりである。 同期回転惑星では、昼夜半球の強い熱的コントラストにより強い発散成分を持つ風系が生じている可能性がある。そこで発散的な風により駆動される海洋循環を調べた。その結果、発散分布に対応した海面の凹凸が生じ、これに伴う圧力分布が風の駆動力をほぼ完全にキャンセルし、極めて弱い流れしか生じないことが分かった。3次元モデルでは鉛直構造を持った流れが維持される可能性があるが、次年度の課題である。 同期回転惑星での昼半球と夜半球の強い熱的コントラストは、降水・蒸発の強いコントラストを伴う可能性があるので、大規模な東西分布を持つ質量源によって駆動される循環の構造を調べた。その結果、基本的にはストンメル(1960)による線形モデルに基づく考察の特徴が再現された。特に、彼のモデルでは存否が不明であった東西方向の流れについて、これがそれほど強くないことが分かった。3次元モデルでの鉛直構造については、次年度の課題である。 AGU(米国地球物理学連合)秋季大会に出席し、関連の研究動向について調査した。その要点は以下のとおりである。 海洋の循環にまで注目した研究は、まだ全く行われていない。本研究の新規性が確認された。 同期回転惑星について、惑星内部から超高層大気に至るまで多面的な検討が行われている。特に、昼半球・夜半球の強い熱的コントラストが、地殻の厚さやマントル対流の構造など、惑星内部の諸特性にも影響する可能性が議論されていた。これは海の深さが東西に極めて非一様になる可能性を示唆する。その循環への影響の解明は次年度以降の課題である。
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