(1)前年度に引き続き、全惑星が海洋に覆われた場合について水平2次元の数値モデルを用いて、基本的力学を調べるための数値実験を行った。同期回転惑星では昼半球と夜半球の強い熱的コントラストが存在し、降水・蒸発の強いコントラストを伴う可能性があるので、大規模な東西分布を持つ質量源によって駆動される循環の構造を調べた。昨年度はストンメル(1960)による線形モデルに基づく設定において、東西方向の流れが強くない事が分かっていたが、より一般的な設定においては、有意な東西流が生じる可能性があることがわかった。これは、同期回転惑星において、昼半球・夜半球の間でどの程度の熱輸送が生じるかを見積もる上で重要である。流れの構造は3次元的である可能性が高いので、次年度に引き続いて考察する予定である (2)海陸分布が存在する場合の循環構造について、水平2次元の数値モデルを用いて予備的な数値実験を行った。その結果、海岸境界条件に起因する顕著な数値ノイズが存在し、それが海洋全体の解を「汚染」してしまうことがわかった。この点を解決しない限り、海陸分布が存在する計算、特に多数の島が存在する場合の数値計算を確信を持って行うことは不可能である。今後、数値粘性・拡散係数や解像度を変えつつ試行錯誤を行い、一般的な海洋循環計算に移行する予定である。 (3)三次元計算については、数値モデル開発上の課題が残っている。具体的には、格子点版の基本部分は完成しているが、スペクトル版は未完成である。なお、2次元モデルにおける計算から、全惑星が海洋である設定について必要な計算時間は、(地球のような)大陸が存在する設定よりもずっと長いことが示唆されている。したがって、3次元計算を多数行うことは困難である可能性もあり、次年度の3次元計算においては、設定をあるていど限る必要があるかもしれない。
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