研究概要 |
昨年に引き続き、下部マントルの第二主要相である(Mg_x,Fe_<1-x>)0に関して磁化率測定を行い、磁気転移点の検出を行うと共に、より高圧下での測定を目指して、ダイヤモンドアンビルセルの改良を行った。(Mg_xFe_<1-x>)0の1気圧下におけるネール転移温度の組成依存性に関しては、転移点の決定方法を見直して再度組成変化を調べた結果、昨年度の予備的結果と同様に鉄濃度が50%付近以上では転移温度の上昇率が上がることを確認した。この結果は(Mg,Fe)0の組成によって磁気構造が異なっている事を示唆しており、各学会での報告を行うと共に、Fujii et al.(2011)として、米国鉱物学会誌であるAmerican Mineralogistに発表した。 また、我々のピストンシリンダー型セルを用いた高圧下の磁化率測定では、(Mg_x,Fe_<1-x>)0のネール温度の上昇率が鉄の単成分側よりやや低い圧力依存性を持っていることが示唆されており、測定圧力範囲がまだ2GPa程度までと低いため、常温までネール転移が上昇するには数十GPaの圧力発生が必要と思われる。低温高圧下での圧力決定としては、幾つかの金属の超伝導転移をマノメーターとして用いた圧力較正を行ったが、より高圧での測定には適用が難しい。そこで、昨年デザインしたSQUID用のダイヤモンドアンビルセルの改良を行い、ルビー測光に圧力測定や、セルの素材の再検討を行って、微小試料でも資料周りに配置される高圧部品素材に起因するバックグランドとなる磁化シグナルに影響を受けないように、また、10GPaを超える圧力下での磁気転移が測定可能となるように、新たなSQUID用小型ダイヤモンドアンビルを開発した。更に、構造相転移と磁気転移の関係を調べるために、放射光を用いた高圧下のX線回折実験を行うと共に、高圧下での鉄のスピン転移に起因するX線吸収端のプロファイル変化を70GPa領域まで取得し、構造変化や結合エネルギー変化が磁気構造と一定の相関を持っていることを確認した。
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