研究課題/領域番号 |
21654082
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 嘉夫 広島大学, 理学研究科, 教授 (10304396)
|
研究分担者 |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (90444207)
|
キーワード | 分子地球化学 / XAFS / 分子軌道計算 / pKa / 内圏錯体 / 外圏錯体 / テルル / セレン |
研究概要 |
本研究では、元素の化学種を調べ、その結果が地球化学的にどのような意味を持つかを念頭において研究を進めた(分子地球化学)。特にこれまで適切な方法がなく、調べるのが困難だった固相や固液界面に存在する微量元素の化学状態をX線吸収微細構造法(XAFS)で調べること、また量子化学的計算を応用することで、以下の成果が得られた。 研究1:海水-鉄マンガン酸化物間のセレンおよびテルルの分配挙動 海洋に存在するマンガン団塊(鉄マンガン酸化物)の主成分は、水酸化鉄(III)及び二酸化マンガン(IV)であり、様々な金属元素を濃縮しているため、重要な鉱物資源として注目されている。中でもテルルは海水と比較して10^9倍程度濃縮している元素である。しかし、テルルと同族元素であるセレンは海水と比較して10^4倍程度の濃縮度であり、テルルに比べて濃縮率が10^5倍異なる。本研究により、セレン(セレシ酸)では鉄マンガン酸化物に外圏型の表面錯体を生成するが、6価のテルル(テルル酸)では内圏型の表面錯体が生成することにより、このような違いが生まれることが示唆された。また、オキソ酸陰イオンの鉄マンガン酸化物への吸着の程度の大きさや内圏錯体のでき易さは、オキソ酸陰イオンのpKaの増加と共に大きくなり、その化学結合の性質が重要な役割を果たしていることが分かった。差などから系統的に説明することができることが分かった。こうしたパラメータに着目することにより、多くの微量元素の海洋での溶解性を予測できることが示唆された。 研究2:オキソ酸陰イオンのpKaの量子化学的計算による推定 研究1で示した通り、オキソ酸陰イオンのpKa値は、これらイオンの挙動を推定する上で重要なパラメータであるが、一部のイオンではpKa値が実験的には求まっていない(例:セレン酸のpKa1など)。そこで量子化学的によりこのようなパラメータを推定する手法を開発した。
|