LSI生産ラインのプラズマプロセス装置では、処理手順を基にプラズマ源の電力やガス供給などのフィードバック制御を経験的に行っている。本研究では、この制御を高度化するために装置内の生成プラズマ分布の計測と評価、プラズマ電力吸収分布の外部からの制御、およびプラズマ分布を入力しその生成に必要とされる電力吸収分布を出力するような、通常とは入出力が逆に設定されたハイパーシミュレータ、を個々に開発し統合することにより、学理に基づく高機能先進知的制御を実現しようとするものである。 電力吸収分布制御に関して、スロットアンテナのキャビティ空間を半径方向に2つに分割し、2重同軸給電により2系統のマイクロ波電源をそれぞれの分割空間に供給して、放射電界を重ね合わせる方法を確立した。これにより、放射電界の半径方向分布を変化させてプラズマ電力吸収分布を制御でき、生成プラズマの密度分布を凸型や凹型に連続的に制御できることを実証した。さらに、新しい制御手法として、目標とするプラズマ密度の相対分布を入力とし、アンテナ放射電界分布の指標を与える電力吸収分布補正係数を出力とするハイパーシミュレータを開発した。2次元モデルと3次元モデルによる径方向並びに方位角方向密度分布について、目標分布を得るために必要な補正係数が求められ、それが正しく目標分布を生成することを通常シミュレーションにより確認した。 このように、昨年度に開発したフーリエ-ルジャンドル展開によるプラズマの分布評価法を含む個々の新しい要素技術がほぼ完成し、これらを統合することによってこれまでにない高機能なプラズマ分布制御が実現できる見通しが得られた。
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