1.プロトン伝導の温度および湿度変化(温度0~90℃、相対湿度0~90%)を同時に測定できる装置を構築し、非対称な結晶チャンネルにNH4+イオンとH20分子が一次元に配列した錯体[(NH_4)_2[Fe(III)_2(ox)_2(μ-0)H_2O]nの粉末ペレットについて、プロトン伝導度の温度および湿度変化の詳細な測定を行った。その結果、プロトン伝導度の温度変化は単純なアレニウス式では表せないことが解った。これは、温度変化により結晶チャンネル中の水分子の数が変化するためと考えられる。これは、温度と湿度の条件により、プロトンがジャンプする距離を変えることができることを示唆している。プロトン伝導度はNafionに匹敵する。 2.一次元のチャンネル方向のプロトン伝導度を精査するため、上記物質のできるだけ大きい単結晶を作る条件をさまざま試した結果、一辺が0.3mm~0.6mのブロック状の単結晶を得ることができた。ただし、単結晶は低湿度下(大気中)で劣化しやすいことを見いだしたため、劣化を防止しつつ、単結晶のプロトン伝導を測定するために装置の改良を行った。 3.この結晶では低湿度下では、プロトン伝導は押さえられ、局所的な運動のみになることを見いだした。今年度購入した高速バイポーラ電源(HSA4051)を用いて、対称中心を持たないこの結晶の分極のヒステリシスを測定するための回路およびプローブの構築を進めた。
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