生体内におけるアロステリック効果など、遠距離相互作用を正確扱うために、我々がオリジナルに提唱したユニット毎の領域軌道の特徴を活かし、N^<5~6>もの演算時間を要する電子相関効果の計算をN^1で行う手法を開発した。まず、これまで開発してきた、局所的電子相関効果(LocalMP2)評価方法を完成させ、絡み合い高分子の例としてインスリンを取り上げ、今まで開発してきたGeneralized Elongation法を適用して良好な結果が得られた。高分子鎖が巻いて戻ってきたときに化学結合がない場合は問題なく解けるが、新たな問題として化学結合が生じた場合(インスリンの場合はS-S結合など)には、従来法との一致が悪くなるという問題が判明したが、原因が明らかとなり解決のめどがついた。絡み合い化学結合系でも、全系に非局在化した系でも、軌道を活性軌道に取り込む手法を新しく盛り込み、従来法との全エネルギーの誤差が10^<-8>a.u./atom程度となるよう改良を行った。 三次元的に絡み合ったタンパク質への本方法の信頼性を確認したあと、分子動力学報による取扱により、溶媒効果の導入を試みた。まず現有のGaussianやGAMESSなどの非経験分子軌道プログラムから電子状態計算をおこない、得られた静電ポテンシャルを分子動力学法プログラムに受け渡す手法を組み込んだ。分子動力学(MD)に量子力学(QM)に基づく電子状態計算を導入するルーチンをプログラム開発中で、さらに大事な部分のみ高い基底関数で取り扱う手法を発展させている。QM部分については、我々が開発してきたLMP2-Elongation法に置き換えることにより、巨大な生体高分子でも、Activeな反応領域に特異的に溶媒効果を導入できるようにも開発中である。
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