研究課題
28π電子系ヘキサフィリンは、芳香族性を持つメビウス型のコンフォメーションで主として存在することを明らかにしている。このメビウス型コンフォメーションを金属錯化によって固定することを試みた。[28]ヘキサフィリンに金属塩として塩化パラジウムを作用させると、予期していたメビウス芳香族性をもつ28π電子系ヘキサフィリンパラジウム単核錯体はほとんど得られなかった。その代わりにメビウス型よりもさらにもう一回π共役系がねじれた新規パラジウム錯体が得られることを見出した。この錯体の構造を単結晶X-線構造解析により明確に決定することに成功した。この金属錯体は明瞭なプロトンNMRのシグナルを示さない。この原因について磁気物性測定、分子軌道計算によって詳しく調べた。その結果、得られた新規パラジウム錯体は空気中でも非常に安定なラジカルであることが明らかとなった。その電子スピンはヘキサフィリン配位子のπ共役系上にくまなく分布しており、このラジカルが共鳴で安定化された非局在化型πラジカルであることがわかった。そのラジカル性を反映して、この錯体は近赤外領域に吸光係数の大きな吸収帯を持つことも見出した。さらに、この錯体の特徴として大きな非線形光学応答を持つことが挙げられる。この錯体の二光子吸収断面積を測定したところ、4300GMと非常に大きい値をしめした。この結果は、非局在化型πラジカルが大きな二光子吸収断面積を持つ可能性を提示するものとして重要であると考えている。
すべて 2010 その他
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Angew. Chem., Int. Ed. 49
ページ: 1489-1491
http://www.apchem.nagoya-u.ac.jp/hshino/sub/research/research.html
http://kenpro.mynu.jp:8001/Profiles/0060/0006050/profile.html