研究概要 |
13族元素であるホウ素は,通常,空のp軌道をもつが,ホウ素にルイス塩基性の置換基を配位させることで,ホウ素にπ電子をもたせることができる.本研究では,これに着目して,π電子をもつ一連の環状ホウ素π共役系化合物を合成し,これらの芳香族性の実証をはじめ,基礎物性を明らかにすることを目的に研究を行った. まず,環状ホウ素π共役系のためのルイス酸性置換基として,二つのイミダゾール骨格をアルキル鎖で架橋した骨格を設計した.DFT計算による分子モデリングを行った結果,六員環の環状ホウ素化合物の配位子として,アルキル基としてプロピル基を用いた場合に,ひずみが小さくなることが示唆された.そこで,まず,これ配位子の合成に取り組んだ. イミダゾールをNaHで処理した後,ジブロモプロパンを反応させることにより,プロピル架橋したビスイミダゾール誘導体を合成した.続いて,これとジヨードプロパンをアセトニトリル中で反応させることにより,二カ所の窒素上をプロピル基で架橋したビスイミダゾリウム塩を得た.本反応では,基質を希釈条件下で反応させることが重要であり,濃度が濃い場合は,副生成物として,4つのイミダゾリウム骨格がプロピル基により環状になった化合物が多く生成することが分かった.これらの生成物の分離生成方法を検討したところ,再結晶法では,目的化合物の結晶が得られるものの,大量の生成物を完全に分離することは難しいことが分かった.
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