研究概要 |
本年度は、ボロン酸を糖認識部位に、カルボキシル基をデンドリマー修飾部位に持つルテニウム錯体[Ru^<II>(acac)_2(4-Bpy)(4-Cpy)](1(2+))を合成し、その錯体をデンドリマー表面に自己集積させ、電気化学的手法により高度な糖応答機能を持つ人工系の糖認識センサーの設計について検討を行った。まず1(2+)とデンドリマー(PAMAM_16(G2),PAMAM_32(G3),PAMAM_64(G4))を組み合わせ、その複合体に各種糖を加えた際の酸化還元挙動ついてCVおよびDPVによる解析を行った。錯体をデンドリマー表面に集積させる際に、1(3+)ではデンドリマー上のアミノ基とRu(III)錯体の正電荷が反発し、集積の阻害が起こってしまう。そのため、電気化学測定はすべて定電位電解によってRu(II)に還元した1(2+)を用いて行った。1(2+)にフルクトース、グルコースを添加していくと、Ru由来の酸化波は負電位側へとシフトしていった。これより、電気化学測定を用いた糖認識機能の評価に成功したと言える。また、選択性はフルクトース>ガラクトース>グルコースの順であった。1(2+)/デンドリマー(G2,G3,G4)複合体にフルクトース、グルコースを添加した時の電気化学的挙動について調べた。G2、G3複合体において、フルクトース添加に伴う電位シフトが観察された。また、G2複合体においてのみ、グルコース添加に伴い、電位シフトが観察された。しかしながら、G4複合体においてはフルクトース、グルコースどちらの添加においても顕著な電位シフトは観察されなかった。G2複合体がどちらの糖に対しても応答を示したのは、ボロン酸部位が挟み込む形でグルコースを多点認識したためではないかと考えられる。一方、G4複合体の場合には表面の密度が非常に高いため、立体障害が起こったと考えられる。これにより世代の異なるデンドリマーとボロン酸型錯体の組み合わせでは、表面の就籍密度の違いにより糖認識機能が大きく変化することを電気化学的評価で明らかにすることができた。
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