研究概要 |
本研究では、以下の2つのテーマにおいて、以下の成果を得た。 (1)不斉素子を用いる反応の開発 申請者が開発した不斉素子(キラルなビニルケテンN, O-アセタール)とアセタールとを同様の条件に付すと、γ-位のメチル基とδ-位のアルコキシ基がsyn体となった成績体を高立体選択的に得る新しい反応を見いだした。また、従来の不斉素子とアルデヒドとの反応で、ルイス酸の量を多くすることにより、γ-位のメチル基とδ-位の水酸基がsynの立体配置になったものが高立体選択的に得られる反応を見いだし、現在論文準備中である。これにより、同じ基質からルイス酸量を変化させるだけで、望みの立体化学を得る方法を確立した。さらに、同じ不斉素子と酸無水物を反応させることによって、立体選択的アシル化反応(1, 6-不斉誘導)が進行することを見いだした。加えて、α-位にメチル基を持たないビニルケテンN, O-アセタールにおいても遠隔不斉誘導反応が実現可能であることを見いだした。 (2)中間体から多不斉ポリケチド鎖の合成 申請者は上記の反応の元となる、anti選択的反応の成績体において、そのコンフォメーションを利用して、二重結合の立体選択的還元を行い、新たにメチル基の立体化学を望みの立体化学にすることに成功した。また、分子の左右に二重結合を持つ成績体に対して、そのアリルアルコールの二重結合とα,β-不飽和イミドの二重結合を区別し、それぞれ立体選択的に還元することに成功した。すなわち、遠隔不斉誘導反応からこれらの還元反応を経ることにより、短工程で多数の不斉中心をもつポリケチド鎖を構築することに成功した。
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