研究概要 |
2,7-ジブロモフルオレノンを出発物質としてモノマー原料である2,7-ジ-t-ブチルフェニル-9-フルオレノンを合成した。これを還元して2,7-ジ-t-ブチルフェニル-9-フルオレノールとし、さらに、このアルコールをアクリル酸塩化物と反応させることにより、モノマーであるアクリル酸2,7-ジ-t-ブチルフェニル-9-フルオレニルを高収率で得た。モノマーの構造は核磁気共鳴スペクトル、質量分析に加え、X-線結晶解析により決定した。このモノマーの、不斉配位子と9-フルオレニルリチウムとの錯体を開始剤としたトルエン中低温での不斉アニオン重合により、一方向巻きのらせん構造を有する光学活性ポリマーの合成に成功した。ポリマーのらせん構造は熱に対しては安定であったが、320nmの光を照射することによりポリマーは直ちに光学活性を失った。このポリマーの光学活性の消失が、ポリマーらせんの崩壊ではなく、一方向巻きらせんの左巻きと右巻きのらせんの等量混合物への変化(ラセミ化)に基づくものであることを、光照射後のポリマーをキラルHPLCにより右旋性の成分と左旋性の成分(左巻きと右巻きのらせん)に分割することによって証明した。ポリマーの光構造転移に対して、ポリマー側鎖のビフェニル部位の光励起によるねじれ-平面転移がまず最初に起き、側鎖の構造変化情報がポリマー鎖全体に伝わって鎖全体のラセミ化が進行する機構を提案した。
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