研究概要 |
印加電圧に応じてON/OFF状態が切り替わってその状態を維持する、電気的双安定性を有する高分子無定形固体の創出と、それを用いた全有機メモリ素子の実現を目的とする。安定ラジカルを高密度に置換したラジカルポリマーを対象とし、電荷注入と空間電荷の挙動に関わる基本現象を解明する。次世代高密度メモリに位置付けられるポリマーメモリを有機分子のみで創出する研究を切り口として、高分子固体の電気的双安定性の支配因子を解明する。具体的には、ポリマーの薄膜素子を用いて、ON/0FF比10万以上、状態保持力数万サイクル以上、繰返し耐久性数千サイクル以上の性能を実現するとともに、ラジカルポリマーに期待される特異な電荷注入・輸送現象を分子構造と相関させて解明し、3V以下の低電圧でもON/OFF比が10,000桁で駆動するポリマーを創出する。 1)電荷注入効率の高いポリマーの設計と合成 ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、トリアリールアミニウムなど安定ラジカル種を側鎖として繰り返しユニットあたりに有するラジカルポリマーを合成し、電荷注入特性試験に供した。 2)有機メモリ素子の作製と特性評価 ラジカルポリマー層内に誘電体薄膜を挿入し、注入された電荷が形成する空間電荷層の挙動を制御し、記録保持性および駆動安定性を向上させた。電荷が誘電体界面で蓄積される不揮発性メモリを構築し、1-V曲線の解析から駆動電圧を明確にした。また、スイッチング機構をSchottky障壁とPoole-Frenkel効果に関連させて明らかにした。次いでラジカルポリマーを拡張し、メモリ特性を指標に最適なSOMOレベルを有するラジカル種を絞り込んだ。電極/ポリマー界面でのラジカル席密度や、ホールおよび電子注入層を介在させた構造も援用し、電荷注入効率を最適化した。
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