研究概要 |
1.混合系による抗がん作用発現 側鎖末端に水酸基を持つシアノビフェニル誘導体(I-CN)と同様のメトキシ誘導体(I-OMe)を合成し、単体および混合系における液晶性と腫瘍細胞の増殖抑制効果を調べた。腫瘍細胞としてヒト肺がん細胞A549を使用し、比較のため正常細胞として繊維芽細胞WI-38を用いた。 I-CN(2.5μM)とI-OMe(2.5μM)を等モル量混合した混合物はそれぞれの単体よりもA549に対して強い増殖抑制効果を示した。また、この混合物は単体同様WI-38の増殖は抑制しなかった。また、両者の液晶性を評価したところ、サーモトロピック性(熱相転移型)およびリオトロピック性(溶媒相転移型)とも等モル量混合物において最も高い液晶性を示した。以上のことから、異種分子の超分子集合が抗がん活性発現において重要な役割を果たすことがわかった。 2.側鎖末端に水酸基を持つ棒状液晶の特異な液晶挙動 一方の側鎖末端に水酸基を持ち、2,3-ジフルオロ-1,4-ジフェニルベンゼンをコアとする棒状化合物を合成し、その相転移挙動を偏向顕微鏡、示差走査熱量計およびX線回折により調べた。この化合物はネマチック(N)相、スメクチックA(SmA)相およびスメクチックC(SmC)相を発現したが、そのN相にはスメクチック相類似のクラスター構造が存在し、SmC相は3種類の副次相から成っていることがわかった。側鎖の長さを変えて構造-相関を調べたところ、隣接分子の配列において、ミクロ相分離による平行配列と静電相互作用による反平行配列とが競合し、その結果生じる水素結合のネットワークが特異な相転移挙動を誘起したと考えられる。本研究で得られた知見は階層構造を持つ液晶相の構築のみならず薬理活性発現のための分子配列の設計に有用である。
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