研究概要 |
最近,我々は分子ギアの構造化学と有機ケイ素合成化学や最新の機器分析を組み合わせることで,分子ギアの回転制御を初めて実現した。すなわち,ケイ素を架橋元素とする分子ギアを新規に合成し,ケイ素原子の4配位と5配位を可逆に変換することで,ギア回転と自由回転の変換,つまりギアにクラッチ機構を導入することができた(W.Setaka et al.J.Am.Chem.Soc.,2008,130,15762.)。本研究は,分子ギアを金などの基板への固定を可能にする新規分子三脚の合成と,開発した分子三脚を金基板上へ固定させることである。 今年度は,申請時に設計した分子三脚を合成する実験を目標とし,研究してきた。その結果,当初の目的化合物を合成することができた。各段階の合成収率は,おおむね良好であった。また,反応の選択性が良くないステップも予想されたが,立体障害を避けるように目的化合物だけが生成するという良い結果をえた。化合物の構造はNMRで同定し,結晶中の構造もX線回折実験で確認した。次年度は,この化合物を基板へ固定し走査型トンネル顕微鏡(STM)で観察することを目標としたい。併せて,更なる誘導体の合成についても検討したい。知的財産権の出願を考えているため,現段階では詳細については記述できない。 このほか,関連する分子機械研究として分子コマを新規に開発し,学会発表と特許出願を行った。また,STM観察に向けての準備としてグラファイトの原子像観察ができる環境を整え,実際に観察可能なことを確認した。
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