研究概要 |
前年度の引き続き,主鎖と側鎖が共役したポリジアセチレンを与える可能性があるモノマー誘導体として,(4-ジメチルアミノ)フェニル基,ピリジル基,1-ピレニル基,4-テトラチアフルバレニル基が片側に置換し,もう一方の置換基としてはメチレン鎖を介してウレタン基が導入された非対称型ブタジイン誘導体を合成した。これらのうち,(4-ジメチルアミノ)フェニル基が置換したブタジイン誘導体については,既にTCNQやTCNEとは付加反応が起こることが報告されていたため,より弱いアクセプターとして,ベンゾキノン,クロラニル,DDQ,2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン(TNF),1,2,4,5-テトラシアノベンゼン(TCNB)などを選択した。また,1-ピレニル基,4-テトラチアフルバレニル基が置換したブタジイン誘導体に対しては2,3,5,6-テトラフルオロTCNQ(F_4TCNQ)をアクセプターとした。ドナー置換ブタジイン誘導体の溶液とアクセプター溶液を混合し,溶媒を除去することで電荷移動(CT)錯体の形成の有無を確認した。その結果,(4-ジメチルアミノ)フェニル基が置換したブタジイン誘導体では,DDQ,TNF,TCNBとの組み合わせで吸収スペクトルの変化が見られた。NMRスペクトルにより生成物の構造を確認したところ,TNFもしくはTCNBとの組み合わせではCT錯体を形成していることが確認された。一方,DDQとの組み合わせでは,[2+2]型の付加反応が起こっていることがわかった。1-ピレニル基,4-テトラチアフルバレニル基が置換したブタジイン誘導体とF_4TCNQとの組み合わせでは,いずれもCT錯体の生成が確認された。この他,ポリジアセチレンナノ結晶の表面修飾と基板の反応性基との化学結合形成や,ゲル形成能を有するブタジイン誘導体の合成と固相重合についても検討した。
|