研究概要 |
前年度の引き続き,(4-ジメチルアミノ)フェニル基,1-ピレニル基,4-テトラチアフルバレニル基が片側に置換し、もう一方の置換基としてはメチレン鎖を介してウレタン基が導入された非対称型ブタジイン誘導体についての電荷移動(CT)錯体化について検討した。(4-ジメチルアミノ)フェニル基が置換した誘導体については,前年度主としてブタジインドナーとアクセプターの溶液の混合によって錯体形成の有無を調べたが,今年度は固体状態での粉砕混合による錯体形成の検討を行った。その結果,溶液混合ではCT錯体の形成が認められなかったベンゾキノンやクロラニルに対しても,粉砕混合ではCT錯体が形成されることを見出した。また,溶液混合では付加体を与えたDDQも,粉砕混合ではCT錯体が得られることがわかった。1-ピレニル基が置換したモノマーには多形があることを見出した。得られたCT錯体について導電率の測定を行ったが,これまでのところ何れも有意な導電率測定ができておらず,その原因としてはCT錯体が部分電荷移動状態となっていない可能性が示唆された。CT錯体への紫外光照射により固相重合をしている可能性がある誘導体が見いだされているが,重合時に出現する励起子吸収とCT吸収とが重なっていることなどの理由により,確実な証拠はまだ得られていない。1-ピレニル基および4-テトラチアフルバレニル基が直結した誘導体については,再沈法によるナノ結晶の作製を試みた。その結果サイズが数百nmのナノ結晶が得られることがわかったが,固相重合性は示さず,結晶構造がバルク結晶とは異なっていることが示唆された。これらのCT錯体ナノ結晶についても,いくつかの手順で作製することに成功した。この他,2本のポリジアセチレン主鎖間が共役しうる構造の生成が期待されるモノマーの合成と固相重合についても検討した。
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