本研究では、長鎖アルキル基を導入したフラーレン誘導体の持つ特殊な両親媒性を利用した超分子組織化構造の応用を目的とする。特に、特殊環境場における疎水的な両親媒性(π-πとワンデルワールス相互作用のバランス)分子の集合性の制御、および得られる異方性組織構造の形成メカニズムの解明、更には金属構造への転写などを目指して研究展開を行っている。平成21年度は、気-液界面を分子組織の場とした分子のファブリケーション技術開発に注力した。その結果、フラーレン誘導体のトルエン溶液を気-水界面にて、徐々に溶媒蒸発を施すことで、界面での薄膜形成を経て、異方的な三次元マイクロ微粒子の細密充填膜を構築する技術を見出した。分子全体として疎水的でありながら、僅かながら界面活性を持つフラーレン誘導体の分子組織化に当たり、再現性良く、大面積の特異超分子組織構造(異方的かつ表面にナノ微細構造を持つマイクロ微粒子)の形成といった、過去にない機能性有機分子の超分子材料ファブリケーション技術、即ち新たなナノテクノロジー技術を見出した。 平成21年度は、様々な長さ、本数の異なるアルキル基導入フラーレン誘導体の溶液中における超分子組織化に関しての詳細な知見、ならびに組織構造への金属スパッタ、鋳型除去を得て金属ナノフレーク構造へ転写する技術の開発も行った。いくつかのナノフレーク金属(金、銀)基板では、表面増強ラマン(SERS)活性を見出した。 今後は、今回得られた異方性微粒子を金属構造へ転写する技術開発、ヘテロ金属異方微粒子を用いた触媒機能の開発へ展開する予定である。
|