セルロースの解重合反応をイオン液体中で進行させることを目指し、セルロースは溶かさないが、極性の高いイオン液体として[TFSA]をアニオンとして有するイオン液体を用いたセルロースの解重合反応を検討した。セルロースを[TMPA][TFSA]と混合し250℃まで加熱したが、全く反応しなかった。しかし、LiClと濃塩酸(12M)を加え、セルロースを100℃で1時間加熱すると、セルロースの半分程度が溶解し、反応が起こっていることが示唆された。ろ過後イオン液体を水で薄め、これを塩化メチレンで抽出し、得られた有機層および残った水相を減圧濃縮すると、有機層からはイオン液体が回収できることがわかった。回収率は99%であり、NMRの結果からほぼすべてのイオン液体が反応することなく回収できることがわかった。水相を濃縮したものを重水でNMR測定したところ、グルコースの信号が得られ、この解重合反応ではセルロースからグルコースが得られてくることがわかった。興味深いことに、グルコースが転位後脱水したフルフラールなどの生成物は一切見られないことがわかった。HPLC分析およびグルコーステストキットによる定量から、この反応ではセルロースの23%がグルコースとして得られることがわかった。約60%のセルロースが解重合されることなく不溶性固体として回収できることから、この反応で得られるグルコースの転化率は50%を超えることがわかった。現在この反応の詳細を明らかにする検討と、グルコースの収率を向上させる検討を行っている。また、ここで回収されたイオン液体を再び解重合反応に用いたところ、同様の効率でグルコースへの変換ができることがわかった。すなわち、この方法ではイオン液体を繰り返し利用できる可能性が高いことが示唆された。
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