マイクロ波照射は、有機合成反応の反応時間を時間単位から分単位へと大幅に短縮する。このため、マイクロ波化学プロセスは、グリーンテクノロジーを実現する革新的手法として期待されている。しかし、マイクロ波による反応の促進機構が未解明のため、マイクロ波化学の基礎が確立されず、実用化も進展しにくい状況にある。本研究では、マイクロ波の化学反応促進の機構として、「マイクロ波照射により、分子が高速回転して隣の分子と擦れあった部分が温度上昇し、反応はその高温局所部で起きるが、反応温度は溶液全体のより低い温度を測定しているので、見かけ上反応が加速されたように見える」という局所加熱説を実証し、反応促進機構を解明することが本研究の目的である。今年度は、局所加熱が存在するか否かについて検討した。その結果、ベンズイミダゾール合成において、出発物質の混合物をヘキサンに微粒子状に分散させた懸濁液にマイクロ波を照射すると、液温が反応温度に達していなくても反応することがわかった。この理由として、バルクの液温は低くても、出発混合物の微粒子中では反応温度まで上昇しているためと考えられた。すなわち、マイクロ波照射による選択加熱と局所加熱が証明された。
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