研究課題
細胞内では、転写因子と呼ばれるタンパク質により転写が制御されている。これにより様々なタンパク質が合成され、複雑な生命活動が維持される。しかしごく最近、核酸塩基の特異な3次元構造であるG-qが「直接的に」遺伝子の転写を制御する、新たな調節機構が提唱された。この転写調節機構の詳細な解析は、新たな生命現象の理解につながる。G-qの転写調節機能の解析を行うには、一本鎖G-qが持つ特異な3次元構造を普遍的に検出し、かつ通常の二本鎖DNAと区別する手法が必要となる。しかし、G-q構造は不安定な構造でありpHや陽イオン種の変化により動的に変化し、またG-qの化学的特性は通常の一本鎖、二本鎖DNAのそれと酷似している。従って、細胞内のDNA機能解析において、従来から用いられている標的DNAの相補鎖をプローブ分子として用いる手法の適用は極めて困難である。そこで本研究では、従来法では困難な動的に形成されるG-q構造を生細胞中で検出するために、有機合成化学的なアプローチによりG-qを選択的に認識し安定化する低分子化合物を創製し、これを動的に可視化する手法の開発を計画した。今年度は、G-qを選択的に認識し安定化する大環状ヘキサオキサゾール骨格を有する化合物の創製に成功した。また当該化合物の側鎖に蛍光基を導入することで、細胞内におけるG-qを可視化することにも成功した。また動的可視化のための基盤となるヘキサオキサゾール骨格を有する60TD化合物の2量体化に成功した。具体的には3種の長さの異なるリンカーを用いて、それぞれを2量化し60TD 2量体化合物を3種合成した。これらを、ゲルシフトアッセイを用いて活性評価を行なったところ、3種のうちの1つが、G-q構造を誘起することがわかった。これらの結果はコンピュータを用いた分子動力学計算からも支持された。
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