研究課題
多く生命現象は、生体分子間の弱い相互作用によって支えられている。例えば、膜を構成する脂質は一義的な化学構造を有する小分子化合物であるが、その集合体である脂質二重膜は特徴的な生物機能を有している。脂質分子の微視的構造と、生体膜の巨視的性質・機能を結びつけるものは、個々の脂質分子間の相互作用にほかならない。生体内の弱い相互作用を正確に可視化しようとすれば、無数の分子が関与する複雑な3次元モデリングを用いなければならず、人間の頭脳では全体像を把握することは到底不可能である。本研究は、複雑な相互作用を化学の言葉で理解するために、人間の頭脳で把握しやすくしながらも、実験に根ざした基本情報を損なわない記述方法(官能基ペアーと機能配座)を提案し、その有用性の実証を行った。本年度の研究では、研究対象を例示すると、今まで生体膜(脂質二重膜)については、分子的実態を実験的に議論することがほとんど行われていなかったので、本年度は、膜構成脂質の重水素、炭素-13、および窒素-15標識体を化学的に合成し、固体NMR測定を行うことによって、脂質分子間の弱い相互作用の構造的基盤を検討した。その結果、スフィンゴミエリンなどでは、相状態が変化することによって部分的な回転配座の変化が生じることが示唆され、このなかに機能配座を含まれると想定された。また、分子の秩序性も相状態によって大きく影響を受けることを実証することができた。現在、官能基ペアーをアミド結合による分子間相互作用と想定して、実験データの集積を図っている。
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