研究概要 |
本研究では、薬剤送達システム(DDS)のカプセルとして利用するためのミセルあるいはベシクルを形成しうる両親媒性分子の開発を目指しており、本年度は肝細胞に特異的に取り込まれることが知られているガラクトースを親水性部位に持ち複数の疎水性基を備えた両親媒性分子を合成し、それらの集合体形成能とその特性を調べた。具体的には、ガラクトースの全ての水酸基をベンゾイル基で保護したものを臭化水素酸で処理してC-1位を臭素化し、この化合物と2,2,2-トリス(オクタデシルオキシメチル)-1-エタノールあるいは2-ベンジルオキシメチル-2,2-ビス(オクタデシルオキシメチル)-1-エタノールを反応させた後、加水分解によりベンゾイル基を除いて、それぞれ化合物1と化合物2を合成した。特に、この化合物1について水溶液中における凝集体の形状と特性を調べた。THFに化合物1を溶解した溶液を超音波照射下で99:1となるようにミリQ水中に滴下して凝集体の生じる濃度、即ち、臨界ミセル濃度を紫外可視分光光度計により、化合物が吸収を持たない波長域で透過率の低下する濃度から見積もったところ、おおよそ4x10^<-5>Mであることがわかった。続いて、1.0x10^<-4>Mとなるように化合物1を添加した溶液について、透過型電子顕微鏡を用いた形状観察で、内水相を備えたベシクル構造と考えられる画像が得られた。同条件で凝集体の粒径を動的光散乱法で調べると約260nmにピークを持つ反射光分布が認められた。この凝集体の安定性を調べるために、グルコース水溶液中で凝集体を作製した後、透析によりグルコースを除いた水溶液に同量のエタノールを添加してグルコース放出挙動を調べたが、殆どグルコースの放出は確かめられなかった。一方、粒径はエタノール添加後に400nm程度のものが主成分となることがわかった。
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