研究概要 |
本研究の目的は,近傍の酸素濃度を制御可能なマイクロ酵素センサを開発するとともに,そのセンサをプローブとして搭載した電気化学顕微鏡(SECM)による単一筋管細胞(C2C12)の拍動時におけるグルコース消費量計測にある.本年度は,まず,C2C12筋芽細胞の培養を行い筋管細胞へ分化させた.この培養ディッシュに2枚のカーボン電極を挿入し,電圧パルスを印加することによって拍動の誘起に成功した.先端直径が20μmの白金製マイクロヂィスク電極を作製し,酸素濃度に依存した還元電流応答を得た.マイクロ電極を筋管細胞の近傍に設置し,電極を走査することにより酸素の還元電流に基づく細胞近傍の酸素濃度分布を捉えた.これにより,単一細胞の呼吸による酸素消費量を見積もることができる.マイクロ電極の表面にグルコースオキシダーゼ(GO_x)を固定化したマイクログルコースセンサを作製し,グルコース濃度に対するセンサ応答を評価した.マイクロ電極表面への酵素の固定化には,酵素を共有結合的に導入したポリリシンを主鎖としたポリマーを利用した.マルチチャンネル型のバンドアレイ電極を用いて水の電解酸化により酸素濃度を制御した空間を形成させ,その空間内にマイクロセンサを挿入してグルコースの酸化反応に付随して生成される過酸化水素の増加量を検出した.水の酸化反応により基板電極の近傍に酸素濃度プロファイルが形成されるため,基板電極-マイクロセンサ間距離により酸素濃度を制御できる.電極表面に固定化した酵素の酸素濃度に対する見かけのミカエリス定数を決定できた.また,1本のガラスキャピラリーに2本の白金マイクロ電極を導入したデュアルマイクロ電極を作製し,それぞれが独立して作動することを明らかにした.
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