研究概要 |
本研究では、イオン伝導体に対する新たな計測技術として、核磁気共鳴(NMR)とイオン伝導度を同時に測定するシステムを開発することを目的としている。そのためには、NMR装置内に設置した電気化学セルに対して、電圧・電流印可装置をつなぎ、インピーダンス測定とNMR信号検出を同時に行なえる装置を構築している。MRI・拡散測定測定用のコイルとの相互干渉 これまでに、 (1)NMRコイルと金属電極との相互干渉の問題、インピーダンス測定装置の接続に伴う外来ノイズの問題、拡散係数・MRI測定時のグラジエントコイルによる渦電流の問題などを克服し、電気化学測定とNMR信号検出が同時にできるようになった。 (2)イオン伝導度は温度依存性が激しく、精密な温度計測をNMR装置内で行う必要がある。そのために光ファイバー温度計を用いて、従来の熱電対に較べて電波干渉や測定誤差を格段に低減する事ができた。 (3)この技術を用いて、燃料電池用高分子電解質であるナフィオン膜に電流を流したときのプロトン拡散の様子をNMR信号とMRI画像として測定し、そこから早いプロトン移動と水分子の泳動による遅い過程を分離検出する事に成功した。この結果は、2009.10のThe 3rd International Conference on Physics of Solid State Ionics (3rd ICPSSI)で発表され、J.Phys.Soc.Jpn.Suppl.A, 79(2010), 160-162.として公表された。 (4)その他、同手法をLiI-H2O-トレハロース系やリチウム電池材料に対しても,適用を試みている。
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