研究概要 |
有機太陽電池は、現在、その実用化に向けての研究・開発が盛んに進められている。その実用化の礎となる有機太陽電池の分子レベルでの基礎科学として、有機太陽電池中のドナー-アクセプター(D-A)はどのような分子間凝集状態にあるのかを明らかにすることは、その太陽電池特性を理解する上で極めて重要である。本研究では、有機太陽電池における材料-デバイス作製プロセス-構造・ダイナミクス-太陽電池特性(光電荷分離・電荷輸送特性)の一連の相関解明を目指して、有機太陽電池で用いられるD-A超分子系を固体NMR法により解析し、どのような材料を用いると乱れた状態にありながら優れた太陽電池特性を発現する階層構造を得ることができるのか、という設計指針を得ることを目指す。当該年度は、poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)(P3HT)と[6,6]-phenyl-C_61-butyric acid methyl ester(PCBM)とを混合したバルクヘテロ接合型太陽電池に関する研究を行った。優れた特性を示すことが知られているこの系において、混合膜の加熱処理によりエネルギー変換効率が向上することが明らかとなっている。今回、その特性向上の起源を明らかにするため、その加熱処理過程でのD-A混合状態の変化を固体NMRにより調べた。その結果、熱処理により相分離が進行することが明らかとなった。これが特性向上に大きく影響していると考えられる。
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