新しい発光性n型有機半導体の開発を目指し、平成21年度は白金(II)錯体を基盤とするりん光性分子についてn型材料の候補分子の探索を検討した。 1. 新規りん光性白金(II)錯体の合成 パーフルオロ置換芳香環のアセチレンおよびビスアセチレン誘導体と三座配位子を有するシクロメタル化白金(II)錯体との反応から白金(II)単核錯体1および二核錯体2を合成した。また、共役拡張型二座配位子を有する白金(II)単核錯体3の合成にも成功した。 2. りん光性n型材料候補分子の発光特性 新規合成した錯体について、溶液中ならびに固体状態での発光特性を調べた。クロロホルム中では、単核錯体1、二核錯体2ともに547nmに発光極大を有する黄色りん光が認められた。これらの錯体については固体状態で赤色の発光が確認され、エキシマー形成が示唆された。単核錯体3では、共役系の拡張によって発光の長波長化が認められた。3については電界発光素子を作製し、光励起と同色のりん光性電界発光を与えることを確認した。 3. りん光性n型材料候補分子の製膜性の評価 半導体特性を評価する際、材料の製膜性は重要である。単核錯体1、二核錯体2についてスピンコート膜を作製し、製膜性について評価した。1の場合、薄膜のAFM観察で結晶塊が認められ、製膜性が悪いことがわかった。一方、2では製膜性は良好であったが、20nm以下の膜厚しか得られなかった。 4. シクロメタル化白金(II)錯体の物性評価 白金(II)錯体の半導体特性評価の予備的実験として、シクロメタル化白金(II)錯体4の発光特性(光励起および電界励起)を評価した。また、X線構造解析から分子パッキングについて調べた。これらの結果から、参照錯体4は二量体を形成する傾向にあり、エキシマーを与えることがわかった。
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