研究概要 |
(1)オキソ酸-ヘテロポリ酸系複合体を含むPBIコンポジット膜の作製と燃料電池発電特性 メカノケミカル処理によって50H_4SiW_<12>O_<40>・50CsHSO_4複合体(50Si50Cs)を調製し、ポリベンズイミダゾール(PBI)と混合することでPBI-50Si50Cs系コンポジット膜を作製した。シングルセル発電試験(160℃,乾燥H_2/O_2)の結果、50Si50Cs無機固体酸複合体を添加したコンポジット膜は約265mWcm^<-2>の最大電力密度とともに、シングルセル運転の際には0.2cm^<-2>の低い面抵抗を示し、純粋なPBI電解質膜と比べて性能が大きく向上した。これはリン酸の間で移動していたプロトンの経路に無機固体酸複合体が分散することで、プロトンのホッピングが容易になり、電解質膜の抵抗が低下したためと考えられる。 (2)メカノケミカル処理による硫酸水素塩-アゾール系無機有機複合体の合成 MHAO_4型無機固体酸としてKHSO_4、NH_4HSO_4およびCsHSO_4を用い、アゾールとしてトリアゾール(C_2H_3N_3;Tz)を用いてMHSO_4-Tz(M=K,NH_4,Cs)無機有機複合体をメカノケミカル合成することに成功した。いずれの無機固体酸も120℃以下の温度領域において10^<-5>以下の低い導電率を示すのに対して、アゾールを導入した複合体では、M^+イオンの種類によらず、低温領域から無機固体酸単体よりも2桁以上高い導電率を示し、測定温度領域全域で10^<-3>Scm^<-1>以上の非常に高い導電率を示した。これは無機固体酸とアゾールの複合化により、両者の間に水素結合などが新たに形成され、水素結合を介したプロトンホッピングとアゾール成分によるプロトンの自己拡散が同時に行われることで、無加湿中・低温領域においても高い導電率を示したと推察される。
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