研究概要 |
本研究では、メカノケミカル処理によって異種固体界面に形成される三次元水素結合ネットワークに着目して、室温~200℃の温度領域において、無加湿条件下でも高い導電率を維持する新規ナノプロトニクス材料の合成を行った。また、固体中におけるプロトンダイナミックスを水素核磁気共鳴分光法(1HNMR)に基づいて解析し、燃料電池の電解質として応用して中温無加湿条件での作動を実証した。 本年度は特に、メカノケミカル合成した無機有機複合体に関し、以下の重要な研究成果が得られた。 リン酸二水素セシウム(CDP)とグアニン(Gn)を出発物質として用い、メカノケミカル法によりxCDP(100-x)幻Gn(x=90~50mol%)複合体を合成した。80CDP20Gn複合体は、CDPの相転移温度より低い温度から2桁程度高い導電率を示し、さらに、水蒸気分圧(PH20)が0.6atmになった場合、その高い導電率が降温過程でも安定して維持していることがわかった。CDPとGn異性体の間の相互作用により、低温でも高い導電率が達成できたと考えられる。 種々の硫酸水素塩KHSO_4、NH_4HSO_4およびCsHSO_4とトリアゾール(C_2H_3N_3;Tz)からMHSO4-Tz(M=K:,NH_4,Cs)複合体を作製した。得られた複合体は低温領域から無機固体酸単体よりも2桁以上高い導電率を示し、測定温度領域全域で10^<-3>Scm^<-1>以上の非常に高い導電率を示した。これは無機固体酸とアゾールの複合化により、両者の間に水素結合などが新たに形成され、水素結合を介したプロトンホッピングとアゾール成分によるプロトンの自己拡散が同時に行わおれることで、無加湿中・低温領域にわいても高い導電率を示したと考えられる。
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