研究概要 |
貫通した孔と骨格(材料部分)から構成され、網目状の共連続構造をもつ一体型の多孔体成形体(モノリス)は高い通気性・通液性、高強度、高比表面積、軽量といった特性を示すため、次世代型多孔材料として注目されている。本研究では高分子溶液の相分離によるモノリスの新規合成法について検討した。先に見出したアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)の含水エタノール中での相分離に基づくモノリス形成に関して相分離条件を詳細に検討し、モノリスの形成条件、モノリス骨格と相分離条件の相関を明らかにした。ポリメタクリル酸メチルの分子量は骨格サイズに大きく影響を及ぼし、分子量が大きいほど骨格が小さくなった。また、反応性のアクリルモノマーであるグリシジルメタクリレートをメタクリル酸メチルの共重合体からモノリスを作ることにより、エポキシ基含有モノリスを開発した。このモノリスは機能性モノリスの前駆体として有望である。バイオマスプラスチックの代表格であるポリ乳酸については、水/1,4-ジオキサン/アセトンの三元溶剤系の選択によりモノリスが得られた。骨格、多孔ともにナノサイズであることが特徴としてあげられ、多孔構造とサイズは溶媒の混合比に大きく依存した。熱誘起相分離法によるポリ乳酸多孔膜の報告例では1,4-ジオキサン/水が溶媒に用いられているが、この場合は孔径が数十ミクロンと大きく、多孔体としての成形が容易でない。この原因を相分離速度が制御されていないためと考え、第三成分溶剤の添加を検討し、ポリ乳酸に対する良溶媒(1,4-ジオキサン)、ポリ乳酸に対する貧溶媒(ポリ乳酸に相互作用しない溶剤、水)、ポリ乳酸との親和性を示すが溶解力のない第三成分溶剤(アセトン)の適切な選択により骨格及び孔のサイズを制御した。ポリ乳酸モノリスの空隙率は94%に達した。
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