貫通した孔と骨格(材料部分)から構成され、網目状の共連続構造をもつ一体型の多孔体成形体(モノリス)は高い通気性・通液性、高強度、高比表面積、軽量といった特性を示すため、次世代型多孔材料として注目されている。今年度は貧溶媒誘起相分離(NIPS)法を用いて、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)をはじめとする高分子のモノリス作製を検討した。NIPS法は高分子溶液に貧溶媒を混合することで相分離を誘起する手法であり、簡便かつ温和な条件下でナノ多孔体の作製が可能である。PHAとして3-ヒドロキシ酪酸(HB)と3-ヒドロキシ吉草酸(HV)の共重合体であるPHBV(3-HB content: 95mol%)を用いた。PHBVのクロロホルム溶液に貧溶媒であるアセトニトリルを混合し静置すると相分離が起こり、白色の成型体が得られた。切断面をSEMで観察したところ、1~2μmの孔と200~500nmの骨格からなる三次元網目構造をもつモノリスであることがわかった。また、容器の選択により任意形状のPHBVモノリスが得られた。ポリマー濃度の多孔構造に与える影響を調べたところ、60mg/mLの場合にモノリスの骨格径が最小となった。骨格径は混合溶液のポリマーに対する親和性や粘度などに依存し、微細構造が制御された。BET法によりモノリスの比表面積を測定したところ、いずれの濃度のモノリスも大きな比表面積を有しており、比表面積と骨格径の相関が明らかとなった。また、得られたPHBVモノリスの示差走査熱量分析(DSC)から、粉末と比べて融解エンタルピーが増大していることがわかった。この結果から、モノリスの形成過程でPHBVの結晶化が促進したと考えられる。NIPS法はポリカーボネートモノリスの作製にも有用であった。
|