研究概要 |
本研究は,近年,注目されている"イオン液体"(IL)を用いた新たな高分子微粒子の高機能化,精密設計法の確立を目指すものであり,ILを機能性物質として高分子微粒子と複合化した自立型感温性高分子微粒子の合成に挑戦する。具体的には,まずはILをカプセル化した高分子微粒子の合成を検討し,さらにIL感温性高分子を複合化させることにより,分散状態ではなく,乾燥状態においても自立的に温度変化により体積相転移を示すことの出来る新規微粒子材料の合成を試みる。 本年度は,神戸大学の大久保らにより提案されたカプセル化(SaPSeP)法を応用して,ILを高分子シェルで内包することにより,微粒子形態でのILの固体化を検討した。カプセル化の機構を踏まえ,適当なILと相分離促進剤の利用,シェル壁構成ポリマーの選択を行うことにより,カプセル粒子が合成できる条件を明らかにした。また,カプセル化を行うことができても,ILとシェル壁構成ポリマーの組み合わせによっては,ILの染み出しが懸念された。例えば疎水性ILの場合,高架橋密度を有するシェルポリマーに対してその親和性が高く,ILの固体化において保持性を高めるためには,シェルポリマーとIL間の親和性を低下させる必要があった。そこで,ILと比較的親和性が低いと考えられる成分を共重合させたシェル壁を作成したところ,水洗浄後においてもILの抜け出しは観察されず,蛍光観察などにより単中空型のカプセル粒子が得られていることを確認した。また,乾燥させたカプセル粒子の安息角の値は流動性の高いカプセル粒子であることからもILの染み出しが抑制されていることを示していた。以上の様に,ILをカプセル化するに当たり,用いるイオン種やシェルポリマーの選択等カプセル粒子が合成できる条件を明らかにした。
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