研究概要 |
理論的に予測されているグラフェンのジグザグエッジに特徴的な現象(超伝導,強磁性等の発現)を実験的に検証するには,原子レベルで揃ったエッジを両端に持つグラフェンナノリボンの作製が不可欠であるが,現在のレジストプロセスだけでは作製できない.本研究では,世界に先駆け,原子レベルで均一なエッジを持つグラフェンナノリボンを革新的な方法で実現すべく,絶縁性単結晶ナノワイヤをシャドウマスクとした酸素プラズマエッチングによる新しい細線加工プロセスを確立し,カイラリティが厳密に制御されたグラフェンナノリボンを創製し,それによって初めて実現される"ナノリボンに特有の新奇伝導現象"の発現をめざしている。その目的の達成に向け,本年度はプラズマエッチング装置の製作から取りかかった。真空チャンバー内に平行平板型のシャワーステージを設計し,上側電極側から酸素を供給しつつ,下側電極に高周波電力を供給し,酸素プラズマを発生させる機構を作製した。酸素分圧10Pa,供給電力を20Wでプラズマ発生条件を最適化し,グラフェンの酸素プラズマエッチングを確認した。数層のグラフェンに対しては数秒間のエッチング時間で基板上から消滅することが確認された。また,ポジ型フォトレジストを用いたマスク効果を確認し,数ミクロンオーダーまでの細線加工はできることを確認した。プラズマエッチング装置の設計・製作に予想以上の時間を費やすことになり,計画していたナノサイズのリボン形状への加工までには至らなかった。今後は,ZnOの絶縁性単結晶ナノワイヤを主体として,ナノワイヤをシャドウマスクとした酸素プラズマエッチングにより,原子オーダーで均一なエッジと線幅を持つナノリボン形状への加工技術の確立と特性評価を進めていく。
|