最終年度は、グラフェンを電子デバイスに応用するために、低抵抗オーム性電極を得るための指針を見出すことを目指した。グラフェンデバイスの低抵抗化に向けては、グラフェンとコンタクト電極との接触抵抗をいかに小さくするかが重要な課題である。これまでグラフェンの電極材料としては、Ti、Cr、およびNiが典型的に使用されており、これらはカーボンナノチューブやフラーレンといったカーボン系ナノ材料でも広く用いられている電極材料である。グラフェンデバイスのコンタクト抵抗に関してはいくつかの報告がなされているが、同じ電極材料であってもコンタクト抵抗値にバラツキが見られており、その議論はまだ道半ばである。また、これまでの報告では、へき開したグラフェンをそのまま利用しているため、グラフェンとコンタクト電極とのオーバーラップ面積(コンタクト領域)やチャネル領域が異なる複雑な系での結果である。今回、グラフェンと金属電極とのコンタクト抵抗をより議論しやすくするため、コンタクト領域とチャネル領域をパターニングしたグラフェンデバイスを作製し、伝送線路(TLM)法での評価を行った。その結果以下のことが判明した。 コンタクト電極としてTiに着目して多端子グラフェンデバイスを作製し、Transfer Length Measurement法を用いて真空中で室温電気伝導測定を行った。測定データからコンタクト抵抗、コンタクト抵抗率およびグラフェンシート抵抗を抽出し解析した結果、コンタクト抵抗がキャリアタイプに依存しないこと、さらに、従来報告されたグラフェンデバイスに比べ低抵抗率コンタクト(10^<-6>Ω・cm^2以下)を有するデバイスの作製に成功したことを見出した。
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