Si終端SiC(0001)表面上にグラフェンをエピタキシャル成長させていく場合、グラフェンは超高真空中での加熱温度に応じて3x3→√<3>x3→6√<3>x6√<3>→1x1グラフェンと、表面原子配列の異なる4つのステージを経て成長していく。本年度は、まずこれら成長における各段階での最表面を構成する原子ネットワークがSi原子からC原子に変化していく様子の詳細を解明するため、成長の各段階で現れる表面構造に水素原子を導入し、その吸着サイトをTPD(Temperature Programmed Desorption)により調べた。この結果、成長の初期に現れる3x3表面段階ではその表面はダングリングボンドを持つSi原子で構成されているが、成長が進んだ√<3>x√<3>表面ステージ以降は、その表面には基本的にグラファイトライクなC原子ネットワークが校正されることが明らかになった。 エピタキシャルグラフェンにドーパントとしてのB原子を導入する場合、一旦グラファイト層的なCネットワークが形成された後に、このネットワークのボンドを破ってB原子をネットワーク中に導入するには、非常に大きなエネルギー障壁を超える必要があり、現実的には難しいと思われる。本年度得られた結果は、B原子導入のタイミングはS原子ネットワークからCネットワークに表面原子配列が切り替えられる成長初期の3x3表面ステージが最も有効であることを示唆している。
|